今回はエナジーハーベスト(環境発電)でIoT機器を動作させる電源ICのお話です。
おだやかな太陽の光が温かく感じる小春日和のある日、
ベテラン社員の先輩Aさんのところに、入社3年目の新人B君が、困った顔してやってきました……
教えて先輩!シリーズ 第1回
太陽電池だけでは朝まで動きつづけないんです・・
A先輩、教えてください! 太陽電池だけで動作するIoT機器を検討しているのですが、うまくいかないんです。
お~B君。ん? 何がうまくいかないんだ?
屋内光用太陽電池と逆流防止用ダイオード、2次電池、センサ、BLE搭載マイコンなどで構成しているシステムで、24時間動作させたいのですが、朝までもたない場合があるんです。夜間は消灯するのでデータが取れていなかったりするんです。
そんなに問題がありそうには見えないけどね。
太陽電池の発電能力が小さすぎるんじゃないの?朝まで持つ能力に増やせばよいだろ?
太陽電池のセル数を増やしたり大きくしたりはできないですよ。どんどん機器が大きくなっちゃうじゃないですか……。コストも上がっちゃいますし。
屋内光用太陽電池を8セル積んでいるんだよね。それで4.4Vとするとダイオードの電圧降下を考えると4.1Vで十分充電できそうだけど……。
うーん、そういえば、電源ICが入っていないよね。いくら屋内光用とはいっても太陽電池だから発電量は変化するし出力電圧だって変化するよね。レギュレータとかDC/DCコンバータを入れないと効率的に蓄電できないんじゃないの?
はい。LDOレギュレータは効率が悪すぎるので降圧コンバータですよね。
でもDC/DCって消費電流が大きいんでそっちのロスの方が大きいような気がしますけど。外付けにコイルも必要ですしコストも上がります。見合うだけの効果があるとは思えないですが……。
要は低消費電流で効率よく2次電池に充電できる降圧コンバータがあれば良いんだよね。
一応、低消費電流の降圧DC/DCコンバータも探したんですよ。
このRP511って動作時の消費電流が300nA(0.3μA)でIoT機器向けらしいんですよ。
いわゆるナノ・パワーってやつだね!確かに消費電流は小さいし、こういう製品って増えてきているよね。
そうなんですが。。。昼間でもダメっぽいです。
RP511が動作した瞬間に太陽電池の出力電圧が下がってしまい、UVLO*電圧あたりで常に動作していてうまく蓄電できていないようなんです。結局ダイオードでもコンバータでも狙い通りの動作になりません……。
* UVLO: Under Voltage Lock Outの略。低電圧誤動作防止回路。低電圧時に動作を止めてシステムが誤動作しないようにする回路
安定した屋内光で蓄電して夜間まで動かせると思ったんですが、やはり、太陽電池じゃ無理なんですかね……。コイン電池では交換が面倒ですし、太陽電池ならいけるかと思ったんですが……。
その降圧コンバータはどちらかというと2次電池の後ろに置くものだと思うぞ。こっちの降圧コンバータにしたらどうだ?このR1800Kは動作時の消費電流は144nA(0.144μA)でさっきのRP511の半分以下でエナジーハーベスト用だよ。
まず、ポイントは逆流防止回路を内蔵していることなんだ。電圧降下もないし、外付けのダイオードがいらないんだ。
ダイオードの0.3V分の電力を使えるのは大きいかもしれないですね。
このR1800Kのさらに凄いところは720nW(0.72μW)で起動できるから薄暗い屋内光でも起動可能なことなんだ。普通の低消費電流の降圧コンバータは薄暗い環境での発電量では動作しないんだよね。
なるほど、昼間だったら消灯していても窓からの太陽光で十分動作できるってわけですか。すごいですね!
それだけじゃなくて夜間だって動作できるよ。別に真っ暗になるわけじゃないだろ。20~30ルクスでも動くらしいから常夜灯程度の明るさがあれば大丈夫らしい。薄暗いバーカウンター程度の明るさでも大丈夫らしい。
バーカウンターの明るさも店によって違いますよ……w。まあ、かなり暗くっても動作するってことですよね!
そうそう!それに、このR1800Kの最大のアピールポイントは最大電力点制御ができるんだ。
太陽電池の最大電力点でコンバータが動作するため一番効率的に蓄電することが可能なんだ。
最大電力点って何ですか?
太陽電池の発電量は明るさによって異なるだろ。その発電量のピークのことだよ。そのピークって結構範囲が狭いので少し外れると発電量が大きく下がってしまうんだ。
だから屋外光用の太陽電池は天気や太陽の動きに左右されて発電量が不安定なわけだよ。屋内光は変化が少ないんだけど、昼休みは消灯するし、人の動きだってあるから陰になることもあるだろ。そうすると極端に発電量が落ちてしまってコンバータICの自己消費電流をまかないきれなくなってしまうこともあるんだ。
この最大電力点制御というのは太陽電池がうまく発電できていない間はコンバータがスイッチングしない、つまり、動かないんだよ。空回りしなければムダに電力を消費しないだろ?ただでさえ電力消費が少ないうえにムダに動かないんだ。
さっきのRP511でうまく蓄電できなかったというのもこの最大電力点制御がなかったからなんじゃないかな。
ああ、最大電力点制御機能がないから太陽電池の発電電力を効率良く引き出せなかったんですね。
なるほど。すごいですね!
もう1つコンバータを教えてあげよう。2次電池の後ろに使うタイプの昇降圧DC/DCコンバータがあるんだ。
昇降圧タイプの超低消費電流のスイッチングレギュレータってありましたっけ?
さっきのRP511のような降圧コンバータはたくさんありますが、昇降圧タイプって昇圧から降圧、降圧から昇圧に切り替えないといけないですからスイッチングさせるのが難しいみたいですよ。調べたんですが見つけられなかったです。
ほとんど唯一という製品だからね。RP604というんだ。このRP604は動作時の消費電流は300nA(0.3μA)なんだ。さっきのRP511と同じだよ。さらに1.8Vから動作するんだ。普通は2.4Vからって製品が多いんだけどね。
低電圧動作で低消費電流で昇降圧タイプって凄いですね!
これを2次電池の後ろに置くと2次電池の終止電圧が1.8Vだからギリギリまで使えるだろ。RP604を追加することで、IoT機器の稼働時間が延長できると思うぞ。RP604についてはまたの機会に詳しく説明するかな。とりあえず、サンプルを入手して試してみろよ!
はい。試してみます! A先輩、ありがとうございます!
R1800Kについて詳しくお知りになりたい方はこちら。
RP604について詳しくお知りになりたい方はこちら。
RP511について詳しくお知りになりたい方はこちら。
※ すべてホワイトペーパー(PDFファイル)が開きます。
これらのデバイスを用いた評価用ボード RIOT-001 についてはこちら。紹介ページが開きます。
IoT機器向け製品について詳しくお知りになりたい方はこちら。特集ページが開きます。
あとがき
不定期ですが、今回から我々の製品がお役立ちできるような紹介ブログを書かせていただきます。あまり難しい内容ではないので軽く読み流していただければ幸いです。
本記事で気になったことがあれば何なりとこちらからお問い合わせください。