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DC/DCスイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)って何?(後編)~昇圧、反転、昇降圧~

作成者: おしえて電源IC委員会|Sep 22, 2022 1:32:56 AM

 

前回のコラムでは、降圧DC/DCスイッチングレギュレータのしくみ、波形生成のための制御方式の違い(PWM制御、PFM制御)、整流方式の違い(同期整流、ダイオード整流)について説明しました。

今回の後編では、降圧以外の動作(昇圧、反転、昇降圧)や、リニアレギュレータとの比較、DC/DCスイッチングレギュレータが持つさまざまな保護機能などについて、説明したいと思います。

 

昇圧、反転、昇降圧と、様々なトポロジーの鍵を握るのは、インダクタ(コイル)

ここまで降圧DC/DCスイッチングレギュレータを例に説明してきました。主な部品は2つのスイッチ(ダイオード整流方式では、1つはFET等を用いたスイッチ、もう1つはダイオードを用いたスイッチ)と、インダクタ(コイル)、コンデンサでした。

実は、構成の仕方を変えることで、入力された電圧よりも高い電圧を出力する昇圧動作、入力された電圧とは極性が異なる電圧を生成する反転動作、入力電圧の変動に合わせて降圧・昇圧を自動で切り替え一定電圧を生み出す昇降圧動作を行えることも、DC/DCスイッチングレギュレータの特徴です。

様々なトポロジーを可能にするカギは、インダクタです。インダクタ(コイル)には電流の変化に逆らうように起電力を発揮するという特徴がありますが、DC/DCスイッチングレギュレータを用いた電源回路においては、そのようなインダクタ(コイル)の性質を応用した電気的エネルギーの蓄積と放出の制御が重要になります。

先ずは、Voutが上昇する、昇圧DC/DCスイッチングレギュレータの例を紹介します。

 

昇圧DC/DCスイッチングレギュレータ

昇圧(英語ではstep-up、あるいは、boostと呼ばれています)DC/DCスイッチングレギュレータは、図8のような回路構成になります。ここでは、2つのスイッチを、それぞれ、スイッチ1、スイッチ2としています。


図8 昇圧DC/DCスイッチングレギュレータ

 

9Step 1)と図10Step 2)を用いて簡単に説明します。

Step 1で、スイッチ1ON、スイッチ2OFFにします。入力側(Vin)からインダクタ(コイル)を経由して、GND への電流が序々に増加します。インダクタ(コイル)に電流が流れることで、インダクタ(コイル)にエネルギーが蓄積されます。(図9

 

Step 2で、スイッチ1OFF、スイッチ2ONにします。スイッチ1OFF にしてもインダクタ(コイル)は電流を流しつづけようとします。インダクタ(コイル)は蓄積したエネルギーを電流として放出していることになります。この電流によって出力コンデンサが充電され出力電圧は上昇します。(図10

Step 1Step 2 を交互に切換えることで出力電圧Voutが上昇します。

図9 昇圧DC/DCスイッチングレギュレータ
Step 1: スイッチ1 ON、スイッチ2 OFF

 

図10 昇圧DC/DCスイッチングレギュレータ
Step 2: スイッチ1 OFF、スイッチ2 ON

 

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次に、極性反転する、反転DC/DCスイッチングレギュレータを紹介します。

 

反転DC/DCスイッチングレギュレータ

反転(英語ではinvertingDC/DCスイッチングレギュレータは、様々な回路構成があり、図11にその一例を示します。

 

すこし横道にそれますが、この回路構成は、昇降圧(英語ではbuck-boost)に分類されている場合もあります。それは、出力電圧値を絶対値として見た場合に、入力電圧に対し、昇圧および降圧の両方の動作を行うことができるからです。そのため反転昇降圧(英語ではinverting buck-boost)と呼ぶ場合もあります。

日清紡マイクロデバイスのウェブサイトの製品パラメトリック検索では、反転しない昇降圧はbuck-boost、反転をともなうものはinvertingに分類しています。

ここでは、反転DC/DCスイッチングレギュレータとして説明していきます。

図11 反転DC/DCスイッチングレギュレータ

 

12Step 1)と図13Step 2)を用いて簡単に説明します。

Step 1で、スイッチ1ON、スイッチ2OFFにします。入力側(Vin)からインダクタ(コイル)を経由して、GND への電流が序々に増加します。インダクタ(コイル)に電流が流れることで、インダクタ(コイル)にエネルギーが蓄積されます。(図12

Step 2で、スイッチ1OFF、スイッチ2ONにします。スイッチ1OFF してもインダクタ(コイル)は電流を流しつづけようとします。インダクタ(コイル)は蓄積したエネルギーを電流として放出していることになります。この電流によって出力コンデンサが放電され出力電圧は下降します。(図13

Step 1Step 2 を交互に切換えることで、出力電圧が0V以下に下降します。

 

図12 反転DC/DCスイッチングレギュレータ
Step 1: スイッチ1 ON、スイッチ2 OFF

 

図13 反転DC/DCスイッチングレギュレータ
Step 2: スイッチ1 OFF、スイッチ2 ON

 

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最後に、昇降圧DC/DCスイッチングレギュレータの例を紹介します。

 

昇降圧DC/DCスイッチングレギュレータ

14に、4つのスイッチで構成する昇降圧(英語ではbuck-boostDC/DCスッチングレギュレータの例を示します。1つのチップ内にインダクタ(コイル)を共有するように同期整流型の降圧回路と昇圧回路を各1セットずつで構築しています。入力電圧に応じて降圧動作と昇圧動作を自動的に切り替えることで、一定電圧を維持できるのが特徴です。

図14 昇降圧DC/DCスイッチングレギュレータ
スイッチ構成の例

 

15と図16にそれぞれ、降圧時と昇圧時のスイッチの状態を示します。

降圧動作時は、昇圧側のスイッチを図15のように固定することで、降圧DC/DCスイッチングレギュレータと同じ回路構成となります。その状態で、降圧側のスイッチのON/OFFを制御することにより、降圧動作を行います。

反対に、昇圧動作時は、降圧側のスイッチを図16のように固定することで、昇圧DC/DCスイッチングレギュレータと同じ回路構成となります。その状態で、昇圧側の2つのスイッチのON/OFFを制御し、昇圧動作を行います。

図15 昇降圧DC/DCスイッチングレギュレータ
4スイッチ構成の例 降圧動作時

 

図16 昇降圧DC/DCスイッチングレギュレータ
4スイッチ構成の例 昇圧動作時

 

2019年"超"モノづくり部品大賞の、電気・電子部品賞を受賞した当社のRP604、および、その次製品のRP605は、4スイッチ構成を採用しています。

 

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DC/DCスイッチングレギュレータ vs リニアレギュレータ(LDOレギュレータ)

DC/DCスイッチングレギュレータとよく引き合いに出されるのが、リニアレギュレータ(LDO、Low dropoutレギュレータ)です。どちらも電圧を一定にして出力する電源ICですが、どのように異なるのでしょうか。以下の表1にまとめてみました。

 

表1 DC/DCスイッチング・レギュレータ vs リニアレギュレータ
  DC/DCスイッチング
レギュレータ
リニアレギュレータ
(LDOレギュレータ)
効率 高い 低い
出力ノイズ 大きい 小さい
回路設計 難しい 簡単
必要な外付け部品点数 多い 少ない
負荷電流 大きい 小さい
コスト 高い 低い
トポロジー 降圧、昇圧、昇降圧、反転 降圧のみ

 

ここまで述べたとおり、DC/DCスイッチングレギュレータは電力の変換効率が高い反面、スイッチを制御するための回路設計が複雑で、スイッチング動作に伴い出力電圧にノイズが発生するといったデメリットがあります。オーディオへの電源供給時にノイズが発生すると、そのノイズの影響で音質が低下するなどの悪影響が出ます。

一方、リニアレギュレータは変換効率こそ低いものの、回路設計の容易さと、ノイズの少ない出力電圧を強みとしています。
つまり、お互いがお互いのデメリットをカバーし合う関係になっているのです。

レギュレータ選びの際には、供給先のデバイスが要求する電源仕様を確認して、適切なレギュレータを検討する必要があります。

 

DC/DCスイッチングレギュレータの保護機能

ここまでは主に基本的なDC/DCスイッチングレギュレータの動作について説明をしてきました。しかし実際には、電源のみならずシステム全体の正常な動作を妨げたり、DC/DCスイッチングレギュレータそのものの自己破壊を引き起こしたりするトラブルからシステムおよびDC/DCスイッチングレギュレータ自身を保護する必要があります。そのために、DC/DCスイッチングレギュレータには様々な保護回路が搭載されています。その例を以下の表2に示します。

 

表2 DC/DCスイッチングレギュレータの保護機能例
  説明 FAQ(詳細説明ページが開きます。)
サーマルシャットダウン機能 サーマルシャットダウン機能とは、出力端子とグラウンド端子がショートした際など、大きな電流が流れることによって引き起こる過熱を検知して、出力をオフし破壊を防ぐ保護機能です。
サーマルシャットダウン回路とは
ソフトスタート機能 ソフトスタート機能とは、電源IC(LDOレギュレータやDC/DCスイッチングレギュレータ)の起動時の突入電流(インラッシュ電流)を抑制し、オーバーシュートを発生させないようにする機能です。 ソフトスタート機能とは
低電圧誤動作防止機能(Under Voltage Lock Out, UVLO) 低電圧誤動作防止機能(Under Voltage Lock Out, UVLO)とは、ICの入力電圧 (VIN) が動作電圧範囲よりも下がり、ICの内部回路が異常状態となる前に動作を止めて保護する制御機能です。 UVLO(低電圧誤動作防止機能)とは
過電圧誤動作防止機能(Over Voltage Lock Out, OVLO) 過電圧誤動作防止機能
(Over Voltage Lock Out, OVLO)とは、ICの入力電圧 (VIN) が動作電圧範囲よりも上がり、ICの内部回路が異常状態となる前に動作を止めて保護する制御機能です。
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出力過電圧保護(OVP)機能 出力のOVP (Over Voltage Protection:過電圧保護) とはVOUT端子電圧を監視し、IC内部で設定されたOVP電圧を超えると出力を停止する機能です。接続先の回路に過大な電圧を印加しないようにするための保護機能です。 出力のOVP(過電圧保護)とは
過電流保護機能(OCP)機能 過電流保護 (OCP:Over Current Protection) とは、出力短絡などによって出力電流が想定以上に大きくなってしまう時に、電源ICやシステムの故障を防ぐために出力を停止する機能です。過大な電流が流れ続けることによる、電源ICの特性の劣化、動作不具合、破壊などの不具合を防止します。
日清紡マイクロデバイスのDC/DCスイッチングレギュレータの過電流保護にはパルスバイパルス型、ラッチ型、リセット型 (ヒカップ型) とフォールドバック型の4つのタイプがあります。
DC/DCスイッチング・レギュレータの過電流保護(OCP)とは

 

 

最後に

現代は様々な電化製品に囲まれる暮らしが当たり前になりましたが、その部品に注目が集まる機会はそう多くありません。特に電源ICは、世間でよく話題になるプロセッサやメモリとは異なり、かなり影の薄い存在です。しかし、その花形部品たちが、ひいてはシステム全体が、安全かつ省エネで動作するためには、電源を効率よく変換しデバイスへと供給するDC/DCスイッチングレギュレータのような電源ICが欠かせません。たとえ目立たずとも、変化する時代のニーズに応えるべく、DC/DCスイッチングレギュレータも日夜進化し続けているのです。

 

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