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日清紡マイクロデバイスが学生フォーミュラに?未来の技術者に出会った日

student_formula




2025年7月28日 公開
日清紡マイクロデバイスでは、自社の情報や社員の日常を発信するため、X(Twitter)を運営しています。そのXに、ものづくりメディアの「ものシンク」 様から学生フォーミュラに向けた走行会のお誘いをいただきまして、どのような活動が行われているのかを見学してきました。

 

★★★


 

 

学生が自分でレーシングカーを作る!?「学生フォーミュラ」とは?

 簡単に学生フォーミュラについて説明します。

 学生フォーミュラとは次世代に通用する技術者の育成を目的とした、公益社団法人 自動車技術会主催の産学官連携ものづくりイベントです。学生を対象としたものづくりイベントには様々なものがありますが、その中でも自動車に特化しているのが特徴です。各チームそれぞれにオリジナルのレーシングカーを作成する過程で、自動車にかかわる技術の習得やチームワークに欠かせないコミュニケーション力、様々な制約の中で新しいものを生み出す創造力を磨くとともに、ものづくりの厳しさや面白さに気づいてもらうことを目的としています。日本の大学や専門学校、自動車大学校のみならず、中国や台湾、タイ、インドネシアなど世界各地のチームが参加する国際的なイベントです。

ご興味ある方は、学生フォーミュラ公式サイトをぜひご覧ください。https://www.jsae.or.jp/formula/student-formula/about/

 

 

電子部品メーカーが、なんで車づくりのイベントに?

 学生が挑む自動車開発のイベントに、日清紡マイクロデバイスのような電子部品メーカーが出る幕なんてあるの?と疑問に思われるかもしれません。

 しかし実際には、現代の自動車には多数の電子部品が使われています。わかりやすいところで言えば、運転席のスピードメーターやタコメーターは液晶ディスプレイが使われている車が増えていますし、室内灯やスピーカーにも電子部品は欠かせません。自動車の本質的な機能である走行関係の部品であれば、電動パワーステアリングなどは電子制御のおかげで快適なハンドル操作が可能になっています。

 日清紡マイクロデバイスの製品にも、自動車向けに設計・開発されたアナログIC(車載機器向けIC)があります。自動車の安全性を担保するために、高品質な製品を長年にわたって供給してきました。

 

 

2024年の学生フォーミュラはどんな雰囲気?現地の様子をレポート!

2024年度の学生フォーミュラ日本大会 2024」は、9月9日(月)から9月14日(土)にかけて、愛知県常滑市にあるAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)にて開催されました。

Aichi_Sky_Expo Aichi_Sky_Expo_2

Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)

 

主な大会スケジュールは下記の通りとなっており、当社が見学に訪れたのは13日(金)です。各チーム、車検やエンデュランスと呼ばれる耐久走行に向けた最終調整を行っていました。

<主な大会スケジュール>

日程 主な内容 日程 主な内容
9/9(月) Day1
※一般観覧不可
■チーム受付
■EV車検
9/12(木) Day4 ■車検
 EV車検
■静的審査
 プレゼン審査
■動的審査
 走行練習
 アクセラレーション
 スキッドパッド
 オートクロス
■その他
 企業PRブース
9/10(火) Day2
※一般観覧不可
■チーム受付
■車検
 EV車検
■静的審査
 プレゼン審査
9/13(金) Day5
(当社見学日)
■車検
 再車検/車検フォローアップ
■静的審査
 コスト監査
 デザインファイナル
 プレゼンフィードバック
■動的審査
 走行練習
 エンデュランス
■その他
 企業PRブース
 学生企業交流会
9/11(水) Day3
※一般観覧不可
■車検
 EV車検
■静的審査
 プレゼン審査
■動的審査
 走行練習
9/14(土) Day6 ■動的審査
 走行練習
 エンデュランス
■その他
 企業PRブース
 集合写真

 

【学生フォーミュラの審査種目】

 上述のスケジュールを見ると、様々な審査が実施されていることがお分かりいただけると思います。学生フォーミュラのマシンは、車体の安全性は大前提として、走行性能以外にも様々な観点から審査されます。

 ここでは、学生フォーミュラにおける審査の種目と概要を説明しつつ、当日見てきたものを紹介します。 

■車検

 学生フォーミュラチームにとっての最初の関門です。学生フォーミュラ経験者も含むボランティアスタッフや自動車メーカーに勤務する方が、安全性や設計要件を満たしているか厳しくチェックします。

 午前9時、会場に到着して最初に目にしたのは、ホールでマシンのセッティングをする各チームの様子でした。車検に備えるチーム、車検を受けている最中のチーム、そしてそのあとの動的審査に備えるチームと、それぞれに準備していました。

vehicle_inspection車検のようす

 

■静的審査

 評価対象は、車体そのものの完成度だけではありません。その車体の企画の優位性や量産を想定した場合のコスト優位性も評価されます。

 静的審査の項目には、コスト、プレゼンテーション、デザイン(設計)の3つがあります。
 コスト審査においては、事前提出したコストレポートに基づいた口頭試問が実施されます。
 プレゼンテーションでは、自動車の製作企業として、自社製作したレーシングカーを販売するための企画を説明するという設定で、資料も用いて行われます。
 デザイン(設計)審査は、事前提出の設計資料や図案を基に行われます。マシンの設計や製作で採用した技術や工夫、そしてそれらの市場性について口頭試問されます。構成部品の設計の適切さ、革新性、加工性、補修性、組立性などが確認されるようです。

 筆者が見学をした日、デザイン部門の最終審査が行われました。最優秀候補3チームのマシンが選出され、最終の口頭試問が始まります。最初に触れましたとおり、学生フォーミュラは世界各地のチームが参加する国際的なイベントですので、口頭試問は日本語のみならず英語でも行われます。会場では他チームのメンバーも聴講する中、各チーム各パーツの担当者が、現役の自動車設計者から投げかけられる質問に答えていきました。

Static_Review_1 Static_Review_2

静的審査のようす

 

■動的審査

 マシンの走行性能を図るのが、動的審査です。次の項目が含まれます。

  • 加速性能を評価するアクセラレーション
  • コーナリング性能を評価するスキッドパッド*1
  • 直線・ターン・スラローム*2・シケイン*3などを組み合わせたオートクロス
  • 全体性能と信頼性を評価するエンデュランス(耐久走行)
  • 燃料・電力消費量を評価する効率

語句説明
*1 スキッドパッド:旋回性能を図るための、円形ないしは矩形の平たん路
*2 スラローム:左右交互の連続的なカーブ
*3 シケイン:急な減速と方向転換を要する障害区間

 

 筆者は、お誘いいただいたものシンク様の案内で、主にエンデュランスを観覧しました。屋外で1周およそ1分50秒程度の指定コースを、2人のドライバーで合計20週走る内容となっています。

 これだけ聞くと「なんだ、余裕じゃん」と思われるかもしれませんが、実際にはかなり過酷なレースです。というのも、会場は炎天下の屋外で、車両にはエアコンがついていません。それでいて、安全上の理由から、ドライバーは厚手のドライバースーツにフルフェイスのヘルメットを被らなければなりません。また、運転中には自動車そのものからも熱が発生します。つまりはドライバーにとっても暑さとの戦いなのです。

 エンデュランスの面白いところは、ただ速く走れればそれでいい、というわけでもない点です。速度やラップタイムといった走行性能に加えて、動的審査の項目である効率も重要です。具体的には、ICVであれば燃費が、EVであれば電費が測定されます(効率)。省エネの重要性がますます高まる昨今、各チーム知恵を振り絞ってエネルギーの消費量をできるだけ抑えるマシンを開発するという、現実世界でも求められる課題に取り組んでいるのです。

 そして、そもそも10周×2回を走りきるマシンを作ることも、困難を極めます。一例として、マシン一台の中に無数の部品が搭載されているわけですが、一か所でも配線の固定が甘ければ、走行中の振動で線が外れてしまうといったトラブルに見舞われます。そうなるとエンデュランスは続けられず、リタイアとなります。それでいて規定時間内に走りきれなければ、その時点で失格です。実際この日も、走行途中のマシントラブルで脱落したチーム、あと1周というところで惜しくもタイムアウトしたチームが出ました。そして一方で、初めてエンデュランスを走りきれたと、一つハードルを越えた喜びを噛み締めたチームもいました。

Endurance動的審査のようす

 

 いかがでしょうか?車そのものの完成度だけではなく、企画や完成までの思考プロセスも評価の対象になっていることに驚かれるかと思います。このように多数の観点から評価する理由としては、自動車産業全体の発展を支える人材として必要な技術力と同時に、他者と協力して目的を達成するために必要な人間性を育てることも企図しているからです。

 

 

日清紡ブレーキも出展!学生と企業がマッチングできる企業ブース

 一通りレースを眺めた後は、企業ブースにも少しお邪魔いたしました。学生フォーミュラには様々な企業がスポンサーとして大会の運営に出資したり、チームへの部品提供などを行なったりしています。そして、スポンサー企業にとっては、厳しいモノづくりを経験してきた優秀な学生と交流できる、大事なリクルートイベントとなっています。

 大会当日のブースには、大手自動車メーカーをはじめ車体設計・製造やブレーキ・サスペンション・電子機器などの部品メーカー、車載用ソフトウェアメーカーなど多岐に渡る業種の企業が出展していました。その中には、同じ日清紡グループである日清紡ブレーキの姿もありました。(写真は、見学当日の夕方に行われた学生企業交流会の日清紡ブレーキのコーナーです。)

Nisshinbo_brake_booth日清紡ブレーキブース

 

performance当日はご当地ユニットによるパフォーマンスも披露されました

 

 

大会を見てきた感想 ~学生の情熱と努力を肌で感じた学生フォーミュラ~

 ここからは、実際に大会を見てきた筆者の感想です。

 1日と言わず開催日全部見たいと思いました。実は、大会の開催約2カ月前に、関西チームの試走会見学にお誘いいただきました。その走行会の時点で、学生たちが試行錯誤しながら組み上げているマシンの完成度に感心しました。

 上手くいくことばかりではないマシン製作に真摯に向き合い、その成果を学生フォーミュラで披露する。エンデュランスを初めて走りきるという目標を達成した喜びを噛み締めたチームもいれば、走行時のトラブルや車検審査不通過で涙を飲んだチームもいたと聞きます。学生たちがフォーミュラづくりにかけた時間と熱量を把握するのには、1日という時間はあまりにも短かったです。

 今回、日清紡マイクロデバイスとしては初めての学生フォーミュラ見学となりました。このような大会は学生たちにとっての成長の場でもあるし、日本の技術力を継承し磨いていく大事な機会でもあります。今後も日清紡マイクロデバイスとして、何かしらの協力や応援をしていけるようにしたいと思いました。

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About Author

内海 裕介
内海 裕介

2018年、旧リコー電子デバイス株式会社に入社。入社以来、デジタルマーケティング課にてコンテンツの英訳、Web分析、SNS運用、動画編集に携わる。入社して初めて半導体や電子回路について学ぶことに。作成したコンテンツについて、「わかりやすい」とコメントをいただけることが担当業務のやりがい。写真が好きで、休日は野鳥や虫、風景を撮りに出かける。カメラ機材や撮影旅行にお金を使いすぎるあまり、たびたび知人に呆れられる。

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