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スイッチICって何かメリットがあるんですか?

作成者: おしえて先輩委員会|Jul 28, 2022 12:33:31 AM

今回はスイッチICって何なのか、メリットって何なの?どんな種類があるの?という、お話です。

ある日、ベテラン社員の先輩Aさんのところに、入社3年目の新人B君が、怪訝そうな顔してやってきました……

 

教えて先輩!シリーズ 第9回

  スイッチICって何かメリットがあるんですか?

 

新人B
A先輩、先輩、スイッチICってありますよね。あれって何のメリットがあるのかよくわからないんですけど。

先輩A
えっ?何?スイッチICの設計者にケンカ売ってるのか?(笑)

新人B
いや、素直にわからないんです。だって、リニアレギュレータ(ボルテージレギュレータ、LDOレギュレータ)を使ったり、スイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)を使えば済むわけですよね。確かに価格は安いですが、コストメリット以外無いように思えるんです。安かろう悪かろう、みたいな。

先輩A
おいおい。コストメリットは大事だろ。1円単位の地道なコストダウンが……

新人B
そうなんですけど。例えば、スイッチングレギュレータはリニアレギュレータに比べて価格は高いですけど高効率で熱設計にも余裕、ってメリットがありますよね。逆にリニアレギュレータは価格が安いだけでなくスイッチングノイズがない、とかインダクタがいらないので周辺部品点数が少ないというメリットがあるじゃないですか。スイッチICにもそういうメリットが無いのかと思ったんですよ。

先輩A
なるほど。そういうことか。もちろん、スイッチICのメリットはコストだけではないよ。例えば、リニアレギュレータに対してだと入出力のコンデンサが不要なケースが多いから周辺部品点数が少ないというメリットがある。それにレギュレーション機能が無いから入出力電圧差が無い。だから、電圧のドロップによる発熱の心配もないよね。回路もシンプルだからチップサイズも小さいし放熱の必要もないからパッケージも小さくできるわけさ。

スイッチICのメリット
・周辺部品点数が少ない(リニアレギュレータと比べて)
・レギュレーション機能が無いから入出力電圧差が少ない=電圧ドロップによる発熱が少ない
・回路がシンプルなのでチップサイズが小さい=コストが安い
・パッケージが小さい(回路が小さく、また放熱の必要がないから)

 

スイッチICのメリットはスペースメリットと熱設計の容易さ!

新人B
なるほど。リニアレギュレータ、スイッチングレギュレータ、スイッチICの3つを比べるとコストメリットはもちろんですが、基板のスペースメリットや熱設計面のメリットが大きいわけですね。

先輩A
もちろん、電圧変換ができないという見劣りする点もあるけどね。でも、スイッチICにはソフトスタート回路が搭載されていて突入電流に対する保護ができたり、過電流保護回路が入っていたり、逆流防止回路が入っていたりと保護回路が充実しているので従来のFETを使ったディスクリートのスイッチ回路とは違うんだよ。あっ、サーマルシャットダウン回路が入っているものもあるよね。

新人B
従来のっていうのは単にPch. FETでON/OFFするだけの回路ってことですよね?

先輩A
そうそう。スイッチICって元々はそれだからね。どんな種類があるかも含めてちょっと説明しようか。

新人B
お願いします。

ロードスイッチIC

先輩A
まずはロードスイッチかな。使う場所はリニアレギュレータやスイッチングレギュレータと同じく負荷の手前だよね。ただ、レギュレーション機能がないから電圧変換ができない。だからスイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)の後段で分配するなどの用途に使うんだよね。ON/OFF機能付きのテーブルタップを考えれば良いかな。大もとの電源から引っ張ってコンセントの口数だけ分配する、そして、使わない時はOFFにするわけだよ。レギュレーション機能がないけどオン抵抗の小さいものを選べば電圧のドロップもほとんどないわけさ。もちろん、保護回路はちゃんとあるから安心だよ。さっきも言ったけど、リニアレギュレータは電圧ドロップが大きい場合には放熱が大きくて熱設計が大変だけどスイッチICにはそれがないから熱対策は不要なんだよ。

図1: ロードスイッチICの基本回路例

ロードスイッチIC一覧

新人B
なるほどです。

USBハイサイドスイッチIC

先輩A
他にはUSBハイサイドスイッチICがあるよね。文字どおりUSB機器接続のラインに使うスイッチだよ。USB機器が接続/切断されたことをUSBホストコントローラからのイネーブル/ディセーブル信号で検知してラインをON/OFFしたり、USB機器の接続ラインを保護したりするのが役割だよ。USB機器の異常によってスイッチがOFFしたことをホストコントローラに知らせるフラグ出力があったりするよね。

図2: USBハイサイドスイッチICの基本回路例

 

新人B
USBホストコントローラにつなぐんですね。

 

外部電源スイッチIC

先輩A
外部電源スイッチもあるな。これは文字どおり外部電源のON/OFFをするスイッチICなんだけど、実際には切り替えるために使うかな。例えば、ACアダプタとUSB充電、ワイヤレス充電、なんかを切り替えるんだよ。切り替えるってことは片側をON、もう一方をOFFするからスイッチだよね、ってそんなことはわかるか。もちろん、保護回路も入っているから例えばACアダプタに異常があって高電圧がかかったりするとOFFになって保護ができるわけさ。

図3: USBハイサイドスイッチICの基本回路例

新人B
2つ使うと切り替えができるんですね。

バッテリーラインスイッチIC

先輩A
あとは、バッテリーラインスイッチICかな。これは文字どおりバッテリーからの入力をON/OFFすることができるんだ。まあ、スイッチというより保護の方がメインかもね。バッテリーからの突入電流保護に使うんだよ。また、電池側に電流が逆流しないように逆流防止回路が入っているんだ。あと、3Aとか6Aとか結構な電流を流せるのでロードスイッチとしても使えるかな。この図にあるようにリセットIC(ボルテージディテクタ、電圧検出器)を内蔵したバッテリーラインスイッチICもあるんだ。図4のようにリセット出力(VDD)を自身のチップイネーブル(LCE)に繋げるだけでBattery電圧によるスイッチのON/OFF回路が簡単に構成できるよ。RLがマイコンの場合、バッテリー電圧の低下を検知してマイコンをOFFすることができるんだ。ちなみに、このリセット回路はバッテリーラインスイッチ回路と独立しているので全く別の用途のリセットICとしても使えるんだよ。

図4: バッテリースイッチICの基本回路例

 

新人B
うーん。バッテリーラインスイッチICとリセットICのニコイチってことですか。まあ、便利に使えば良いんですけど。(笑)

 

インテリジェント・パワースイッチIC

先輩A
インテリジェント・パワースイッチICというロードスイッチの高機能版もあるね。異常があった場合にいきなり保護するのではなく少し待って保護をかけたりするんだ。異常が瞬間的なものだったら いちいち保護がかかると面倒だからね。保護のレベルも2段階あって細かな保護設定ができるんだ。電圧異常や温度異常で保護をかけたりもできるんだ。

図5: インテリジェント・パワースイッチICのブロック図

新人B
タイマが2つあって過電流制限も2つあるわけですね。外部センスもあるのか。ここにVOUTを接続すれば出力電圧の低下を検出できたり、サーミスタを接続すれば温度異常が検出できるんですね。

逆接動作スイッチIC

先輩A
最後にちょっと変わり種を紹介しようか。逆接動作スイッチICといって電池をプラスマイナス逆に入れても動作するんだ。当然、機器が壊れないから保護にもなる。

図6: 逆接動作スイッチICの基本回路例

新人B
はあ?

先輩A
まあ、簡単なスイッチなんだけどね。最近老眼で電池ボックスに書いてある電池の方向マークが見えないんだよ。こういうスイッチがもっと使われると楽になるんだけど……

新人B
はいはい。子供のおもちゃ用ではなくて老眼用なんですね。わかりました。ありがとうございました。

  あとがき
我々の製品がお役立ちできるような紹介ブログの第8回目です。
本記事で気になったことがあれば何なりとこちらからお問い合わせください。


 

※ 過去の「教えて先輩!」シリーズ記事はこちら:
  第1回: 太陽電池だけでは朝まで動き続けないんです・・
  第2回: 携帯機器のスリープ時に電池がどんどん消耗するんです…
  第3回: バックアップ電源切換回路が面倒くさいんです。
  第4回:AEC-Q100ってなんですか?
  第5回:サンプルをこっそり手にいれたいんです。
  第6回:こんなリセットICってどうやって使うのですか?(機能安全って?)
  第7回:携帯機器がフリーズしても、リセットできないんです~!
  第8回:ボタンを触らずに操作できる(ボタンのタッチレス化)ってどうやってるの?