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AEC-Q100って何ですか?

今回は車載向け半導体製品の信頼性試験規格のお話です

ある日、ベテラン社員の先輩Cさんのところに、入社2年目の新人Dさんが、困った顔してやってきました……

最終更新日:2023年 12月 8日

※教えて先輩!シリーズ、の過去の記事はこちら:
  第1回: 太陽電池だけでは朝まで動き続けないんです・・
  第2回: 携帯機器のスリープ時に電池がどんどん消耗するんです…
  第3回: バックアップ電源切換回路が面倒くさいんです。

 

教えて先輩!シリーズ 第4回

  AEC-Q100って何ですか?

 

business_woman3_1_question+新人D
C先輩、AEC-Q100って何ですか?

icon_business_woman02先輩C
? どうしたの?

business_woman2_4_think+新人D
データシートに「AEC-Q100」って書いてあるんです。ネット検索しても今ひとつ ちゃんとした説明が見つからないんです。

icon_business_woman02先輩C
ああ。それね。AEC-Q100というのはAutomotive Electronics Council という車載部品の規格を決める団体が作成した集積回路(IC)を使用するときに一定の品質/信頼性が期待できることを判断するための規格のことよ。この規格に準拠しているとAEC-Q100準拠とうたうことができるのよ。

business_woman1_4_ase新人D
はい、それぐらいは理解できたのですが……ただ規格の内容がよくわからないんです。英語も読めませんし。

AEC-Q101、AEC-Q200もある!

icon_business_woman02先輩C
うー。確かにね。英語の規格書とか各半導体メーカから詳しい資料は提供されているんだけど専門家向けだから私たちには難しいかな。半導体の場合、基本はAEC-Q100で、Failure Mechanism Based Stress Test Qualification for Integrated Circuits in Automotive Application (車載用集積回路の故障メカニズムに基づくストレス試験品質認定)といって、ICの評価や試験に関する規格なのよ。これに、AEC-Q100-001、-002、・・・、-012まで細かい試験の方法を規定しているものもあるわ。他に、AEC-Q101はトランジスタやダイオードなどのディスクリート半導体用、AEC-Q102は光半導体用、AEC-Q103はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用、AEC-Q104はMCM(Multi Chip Modules)用、AEC-Q200は抵抗やコンデンサなどの受動部品用の規格なのよ。

AEC-Q100-3

business_woman2_1_idea+新人D
なるほど、ICの評価や試験の規格なんですね。日本だとJEITA(旧EIAJ)やアメリカならJEDECが定めた規格がありますけどそれとは違うんですか?

icon_business_woman02先輩C
基本的に同じなんだけどAutomotiveという名前のとおり車載用部品に特化したものなのよ。AEC-Q100の中には試験方法は「ここはJEDECのXX規格を参照」とか書いてあるわ。
昔のクルマって電装部品が少なかったんだけど、今のクルマは電装部品の塊というぐらい多く使われているよね。クルマって寒いところから暑いところまで使われるし、振動はあるし、普通の民生品に比べると使用環境が過酷だからクルマメーカがいろいろ特別な注文を部品メーカにしたのね。でもクルマメーカAのリクエストとクルマメーカBのリクエストは微妙に違う、なんてこともあって規格化しようということになったらしいの。JEDEC規格は半導体・電子部品メーカーが集まって決めたものだけど、AEC-Q100はクルマメーカと半導体・電子部品メーカが一緒になってJEDEC規格をベースに決めたものなのよ

business_woman1_1_smile+新人D
なるほど。要は車載用部品の厳しい試験に合格しないとAEC-Q100準拠とうたえないのですね。
その試験自体はどんなものなんですか?

AEC-Q100の信頼性試験って何ですか? (出荷検査と信頼性試験)

icon_business_woman02先輩C
半導体部品とか電子部品はさまざまな試験をして合格品を出荷しているよね。信頼性試験って何かわかるかな?

business_woman1_1_smile+新人D
出荷検査はちゃんと動作するかをチェックしていて、信頼性試験は寿命試験ってことでしょうか?

icon_business_woman02先輩C
うーん。まあ、そうね。信頼性試験は製品寿命が期待どおり実現できているかを確認する試験なのよ。

business_woman1_1_smile+新人D
製品寿命ってどのくらいですか?

icon_business_woman02先輩C
基本的に車載製品は15年間以上ね。AEC-Q100にそう規定されているの。

business_woman1_4_laugh+新人D
まあ、クルマって3年とか5年とかで買い替えますもんね。

icon_business_woman02先輩C
えっ!うちなんて10何年乗っているのに……

business_woman1_4_ase新人D
いえ、私はそもそもクルマを持っていないので……

icon_business_woman02先輩C
……。まあ、15年というのはクルマの実使用期間なの。クルマって朝から晩まで24時間フルに動作しているわけではないでしょ。タクシーでも1日8時間ぐらいかしら。うちなんて週末しか運転しないから1週間で2時間ぐらいかな(泣)。AEC-Q100ではクルマの使用期間を15年以上、Tj平均温度を87℃、稼働時間を12,000時間と想定してそれに相当する加速条件として125℃の高温で1,000時間とか、場合によっては、それ以上の時間をかけて試験するのよ。

注) 実際のところ、業務用車両はハードな使い方をされるのでAEC-Q100の規定ではカバーされていないと思われます。ただ、自動車メーカが独自に仕様を変えたり、運用事業者が独自に定期点検や部品交換などを行っていることで安全が保たれているようです。

business_woman1_4_ase新人D
えっと、1,000時間とかの信頼性試験をかけるってことは中古品になっちゃいますよね。

icon_business_woman02先輩C
そうね。出荷する製品の電気的特性、外観検査はもちろん全数検査をして保証をするんだけど、1000時間の信頼性試験は全数検査ではなく、統計的に有意な数量を抜き取って検査するのよ。これ、何個抜き取るかは難しいよね。それで、AEC-Q100によって基準が定められているのよ。AEC-Q100では試験サンプル数を77個とか45個とか試験ごとに定めているの。試験ロット数も3ロット必要だったりするのよ。

business_woman3_1_question+新人D
結構大変そうな試験ですね。1,000時間として3ロットだと3,000時間必要ってことか……。単純計算で4ケ月以上かかるんですね。もうちょっと具体的に教えていただけないでしょうか。

icon_business_woman02先輩C
うーん。AEC-Q100の規格書のテスト・フロー図を見てみようか?9ページだよ。
いっぱい「Test」って書かれているよね?「TEST GROUP」はそれぞれの評価・試験項目の検査フローを意味しているの。そして、@Roomというのが常温、@Hotが高温、@Coldというのが低温で、検査温度条件になるのよ。
例えば、PCはPreconditioningの略で実際の実装工程でかかるストレスを想定した前処理のこと、THBはTemperature Humidity Biasの略で高温・高湿・バイアス、つまり高い温度、高い湿度で高い電圧をかけての寿命試験のことね。実際には温度85℃、湿度85%とか規定されているわけ。

business_woman3_1_question+新人D
すごいですね。何がなんやらわかりませんけど。これは該当するGroupの試験を行えばよいのですか?

icon_business_woman02先輩C
いや、ほとんど全て行うらしいのよ。例えば、Test Group Aって環境ストレス加速試験だし、Test Group Bは製品寿命シミュレーション加速試験、Test Group Cはパッケージングの完全性試験、……だからほとんどの製品に当てはまる項目だよね。

business_woman2_1_idea+新人D
えっ!全部ですか……。大変ですね。

icon_business_woman02先輩C
だから、AEC-Q100準拠っていうのは伊達ではないってことだよ。

business_woman1_4_ase新人D
はぁ~。

グレード?

business_woman3_1_question+新人D
AEC-Q100には「グレード」もあるんですが、これは何ですか?

icon_business_woman02先輩C
グレードは実際に使用される製品の温度範囲のスペックのこと
製品の使用する温度範囲として、Grade 0は-40℃~150℃、Grade 1は-40℃~125℃、Grade 2は-40℃~105℃、Grade 3は-40℃~85℃と決められているよ。

Grade

business_woman1_1_smile+新人D
なるほど、これは動作周囲温度範囲と同じですよね。これは製品ごとに決められている定格値と同じなんですよね。

icon_business_woman02先輩C
そうね。製品の動作周囲温度範囲が-40℃~85℃なのにGrade 2(-40℃~105℃)なんてことはあり得ないよね。だから、グレード表記は省略されていることが多いよね。

business_woman1_1_smile+新人D
よくわかりました。ありがとうございました。

 

*) 2023年12月8日に一部修正・加筆しました。品質/信頼性規格であるAEC-Q100の内容が信頼性に偏っていた点を修正しています。

    AEC-Q100の規格書のリンクをRev-HからRev-Jに更新しました。 

*)2022年8月に一部修正・加筆しました。大きな変更点はクルマの想定稼働寿命を10年から15年以上としたことです。

 

日清紡マイクロデバイス(旧リコー電子デバイス)の車載製品について知りたい方はこちら

 

 

日清紡マイクロデバイス(旧リコー電子デバイス)の「品質と信頼性」に関してはこちら

 

 

あとがき
我々の製品がお役立ちできるような紹介ブログの第5回目です。
本記事で気になったことがあれば何なりとこちらからお問い合わせください。


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※過去の信頼性試験関連の記事はこちら:

第10回: 半導体の品質保証って何ですか?
第13回: 半導体部品の上手な取り外し方 ~やさしく取り外さないと後が大変!~

半導体の微細化と半導体ビジネス その2
半導体の微細化と半導体デバイス

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おしえて先輩委員会
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日清紡マイクロデバイスのマーケティング担当者がFAE(Field Application Engineer)や企画担当者、品質保証担当者のダメ出しを受けながら書いています。 エンジニアの皆さんには当たり前の内容だとは思いますが、初心者の皆さんに少しでもエレクトロニクス分野に興味を持っていただければ幸いです。

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