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日清紡マイクロデバイスが、IoT実証実験を始めたわけ

experiment

今回は当社日清紡マイクロデバイス(旧リコー電子デバイス)のIoT分野の企画戦略担当による”企画開発日記”です。”当社がIoT実証実験を始めたわけ”、について書き留めたコラムです。
関西弁がところどころ混じっていますが、ご容赦ください。

★★★

2019年春ごろ、、、

「うちの会社もIoTシステムを構築するのに、最適な電源ICがそろってきたぞ!
ナノオーダーの超低消費電源IC、軽負荷での高効率、IoT特有の間欠動作にも負けない負荷変動特性、
太陽電池から効率よく電力を取り出すIC、バッテリー電圧を簡単にモニターできる機能・・・・なんでも来いって感じだ。
さぁ、これでお客様のところで特性アピールだ! よ~し、パワーポイントに特性一覧表を作成して、この素晴らしい特性をみてもらおう!」

 

私:
「お客様! 弊社のIoT向けの電源IC製品いかがですか?超低消費、高効率、バッテリー電圧までモニター可能です」

お客様の声:
「いい特性の電源ICですね。。。。。。」

 

残念ながら、その後、商談はなかなか進展せず、、、

「そうか。。。電源ICの特性アピールだけではだめだ! お客様の立場に立って、”お客様の価値”で話さなくては。。。」

 

私:
「お客様、弊社のこの超低消費の電源ICを使えば、お客様のシステムでは電池持ちが1年延びますよ、
つまり電池コストが下がります。電池交換するための人件費も削減できます!」
「簡単に電池電圧も見れますよ。今までお客様がご使用になっていた回路の外付けの抵抗も不要になり、ボード省面積だけでなく、コスト削減にもなりますよ!」

お客様の声:
「お~、
それはいいですね。。。。。。。。。。。。。。。」

 

「う~ん、一部のお客様には響いてて、それなりの感触は得たけど、もう少しインパクトが欲しいな。。。
お客様が何を求められているのか、何をおっしゃっていたか、もう少し詳しく思い出してみよう。」

 

お客様の声を回想:
お客様A:「置くだけで使えるものないの? うち、開発リソースないんだよね。。。」
お客様B:「IoT化して、効果があるのかだけでも早く見たいんだよね。見てくれはいいから、実際に動かす検証って早急にできない?」
お客様C:「こういうのを考えてるんだけど作ってくれる? もちろん安くね。」

 

「そうか、お客様は忙しいんだ! システムを考える時間もないのかもしれない。。。
一度、自分たちでIoTシステムを作って、実証実験をやってみないと、本当の苦労はわからないのかもしれない。
そしてその先にきっとお客様が求めているものが見えてくるはずだ!
自分たちでIoT実証実験をやってみよう!」

 

 

長々と書きましたが、これが、当社で環境センサーRIOT-001の開発を始めたきっかけであり、そしてこのシステムを使用したトイレ個室空き確認実証実験を始めたきっかけです。

 

トイレセンサシステム2-2トイレ個室空き確認システム概要

 

RIOT-001 トイレ個室センサの活用事例動画

 

で、実際、この実証実験の検討、運用を開始すると、いろいろ悩みました。

回路設計、基板設計では、
   ・基板設計に電源周りのノウハウも必要だな。。。
   ・通信の方式はどうしようか。。。マイコンはどれを選ぼうか。。。
   ・小さく作るのって結構難しいな。後で追加したいときもあるだろうし。。。

部品選択においては、
   ・数多くの部品選択肢の中から何を選べばよいのか迷うな。。。
   ・センサーの精度はどこまで必要だろうか。その精度を無にしないノイズ特性のよい電源ICも必要だし。。。
   ・低消費だけで選んでも駄目だな。。。間欠動作にも耐えられるものでないと。。。
   ・DCDCの効率も、よく使う負荷での高効率が大事だな。でもよく使う負荷ってどれくらいだ?
   ・システムとして寝ている時間が長いから、スタンバイ電流が少ないことも重要だな。。。


電力バジェットの計算において、
   ・結構、電力計算って複雑。これで計算あってるかな?
   ・太陽電池の大きさ、2次電池の容量、通信の形式や頻度、、、パラメータがありすぎやん。。。

*電力バジェット:そのシステムで使用可能な電力量

 

また、実証実験(トイレ個室の空き確認実験)を開始すると。。。。。

   ・トイレのドアに、基板ボード取り付けるのって思ったより大変だな。。。
   ・あれ? トイレの開閉状況のデータを取り損ねているときがある。複数回受信する必要があるな。。。
   ・この通信頻度では、長い休みで電源供給が途切れると厳しくなる時があるな。計算では大丈夫なはずなのに。。。

実証実験利用者からの意見も集まってきた。

   ・自分の席からトイレの状況を知りたい!
   ・センサーが気になって、用を足す時に・・・・集中できない。もっと小さく目立たなくして欲しい。。。
   ・「もうあかん、我慢できん」という時に満室の場合、すぐ他の階にいけるので、他のトイレにも取り付けて欲しい!

 

このように、自分たちで実証実験をやってみて、わかることがたくさんありました。
実に多くの検討しなければいけない事項があることも。

そして、
「置くだけで使えるものをもってきて欲しい!」
このお客様の声も、ごもっともだということにも気づきました。

 

こうして、私たちの経験、お客様の声も反映しながら、改良、環境整備してきたのが、
日清紡マイクロデバイスのRIOT-001環境センサーです。

riot-001_topTOP riot-001_bottomBottom

 

このRIOT-001環境センサーは置くだけで使えます。
温度/湿度/気圧/照度/電池電圧を電池レスで観測できます。
これらのデータを表示させるソフトウェアも当社HPからダウンロードするだけです。
太陽電池での蓄電を待たずに、すぐ動かしたいときにはコイン電池で動かすことも可能です。

main_riot日清紡マイクロデバイスの環境センサーボードについて

RIOT-001 搭載製品
R1800 シリーズ: エナジーハーベスト用 低消費電流 (IQ 144 nA) 降圧 DC/DCコンバータ
RP604 シリーズ: 低消費電流 (IQ 300 nA) 300 mA 同期整流型 昇降圧 DC/DCコンバータ
RP124 シリーズ: バッテリーモニタ機能付き 低消費電流 100 mA LDOレギュレータ

 

IoTシステムを構築しようとするときに、
「とりあえず動くものを早急に!」
このコンセプトは非常に重要です。

この ”とりあえず動くもの” を早く作って、
「IoTシステムとして成り立つのか?」
「定量的にどれほどの効果があるのか?」
「初期費用は?運用費用は?」
まず、この見極めを行うことが大切です。見栄えや細かい改良は後でやればよいのです。

繰り返しになりますが、RIOT-001環境センサーは、置くだけで温度/湿度/気圧/照度/バッテリー電圧が測れます。
これにお客様が、CO2濃度を図りたい、加速度センサーもつけたい、位置情報を知りたいなどの要望があれば、そのセンサーを取り付ければよいことになります。上記でご紹介させていただいた、トイレ空き確認実証実験も、RIOT-001環境センサーにドア開閉センサーを取り付けて実験を行っています。

もちろん、追加するセンサーの消費電流や使い方により、電力バジェットの計算は再度行う必要がありますが、今ある既存のものを基準にすることによって、
太陽電池を大きくする? 通信頻度を少なくする? 2次電池の容量を大きいものにする?
素早い検討が可能になります。(もちろんソフトウエアの改良も必要ですが)
お客様の使い方によって自由な設計が可能です。
ぜひ、もし、よかったら、試してみてください!

「あ~、大変だったけど、ホンマにやってよかった!」

★★★

以上、IoT分野の企画戦略担当による”電源ICメーカーである日清紡マイクロデバイスが、IoT実証実験を始めたわけ” でした。
なお、RIOT環境センサーボードの第二弾も企画中です。。。乞うご期待下さい!!

半導体の微細化 スケーリング則の限界
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