この度、日清紡マイクロデバイス(旧リコー電子デバイス)のサイトで、リチウムイオン電池保護ICのコラムの連載を始めました。
当社の電池保護ICのスペシャリストによる連載コラムです。
リチウムイオン電池の安全性を陰ながら支えている保護ICについて、開発の歴史からアプリケーションの遷移、トラブルシューティングなど、過去の体験談を交えながら語る予定で、2021年6月から数回に分けてシリーズ掲載していきます。
今回「もっと教えて電源ICブログ+」ではそのコラムの第一回を簡単に紹介しますので、興味もたれた方はぜひ本文を読んで頂けたらと思います。
第1回 リチウムイオン電池保護ICの歴史(前編)~初期の機能から最新の機能まで~
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今回ご紹介する第一回は、リチウムイオン電池保護ICの歴史(前編)です。
リチウムイオン電池はご存知のとおり、携帯電話、カメラ、PCなどのモバイル機器はもちろんのこと、今では自転車や自動車などにも広く使われており、繰り返し充電できる二次電池です。
実は当社、日清紡マイクロデバイス(旧リコー電子デバイス)は、90年代後半に携帯電話端末のシステムを構成する上で必要となる電源機能を含む、アナログ機能のほぼ全てを取り込んだAOC(アナログ・ワン・チップ)という半導体チップの開発に日本で初めて成功し、当時日本で年間4,000万台を越えて販売されていた携帯電話の50%以上に、当社のAOC(PMIC)が搭載されていました。
当社の複合電源(PMIC)は、約 100製品 をリリース、累計4億個を超える出荷実績 があります。
携帯電話と保護IC
携帯通信機器の主役がポケベルから携帯電話に移行し始めた1990年代後半、自動車電話向けの
システム電源ICの開発から当社のPMICの歴史が始まりました。
その携帯電話の黎明期から成長期を通して全盛期にかけて、例にもれず当社の保護ICも携帯電話の電池パックに採用されていました。
当社が初めて保護ICを開発したのは、もう25年ほど前になります。
25年といえば四半世紀です。その間に、いろいろなことが起こりました。トラブルも発生しました。
それに対して、機能追加や、技術革新で乗り越えてきました。
過充電検出、過放電検出、放電過電流検出
最初の製品は3つの検出機能だけしかついていませんでした。過充電検出、過放電検出、放電過電流検出です。
そのうち、過充電検出機能の仕様を見誤ったため、お客様の評価段階で問題が発生してしまいました。
その後の製品にはその教訓を生かした機能をつけることで対応しました。
過充電検出、過放電検出、放電過電流検出などの機能の特徴についてはこちら
リチウムイオン電池とニッケル水素電池
また、当時の携帯電話にはリチウムイオン電池だけでなく、ニッケル水素電池が使われていたモデルもあり、その電池の違いにも対応する必要がありました。
ニッケル水素電池は、リチウム電池よりも安価で使いやすかったため、昔は携帯電話にもよく使われていました。ただ、継ぎ足し充電を繰り返すと性能が低下する、メモリー効果があるため、メモリー効果がなく、ニッケル水素より大容量化できる、リチウム電池にとって変わられて行きました。現在は乾電池が使えるほとんどの機器で充電式電池として使われています。
0V電池への充電とデンドライト
昔は0V電池への充電可否で、電池メーカーと電池を使うセットメーカーで、意見が分かれていたことも興味深いです。
0V近辺まで放電された電池を充電すると、デンドライトの発生によって、内部短絡を起こす可能性があり、
電池メーカーは0V電池への充電を禁止にしたかったのですが、セットメーカーとしては、お客様のクレームにつながるため、
たとえ0Vまで放電した電池でも充電をさせたいという気持ちがありました。
デンドライトとは、一般的に針状結晶を指しますが、ここではリチウム金属が針状結晶で析出することを指し、デンドライトが発生すると正極と負極をセル内で分離するセパレータ(分離膜)を突き破り、内部ショートを発生させて最悪の場合、電池の熱暴走を引き起こしたりして、非常に危険な状況になります。
更なる精度向上と機能追加
時が進み、電池の性能が上がるとともに、安全に対する意識も高くなっていき、新たな保護機能の追加や、検出精度の向上が行われてきました。
2000年代に入り、遅延時間をすべて内蔵カウンターで設定できるようにして、遅延用コンデンサを不要にして、お客様のコストダウンにつなげられる製品も出しました。また、この製品はテスト端子を設けることでテスト時間の短縮も可能にしました。
それから、外付け抵抗を使うことによる、過電流検出の精度向上方法を提案したり、過電流検出の段階数を増やすことで、より細かく過電流を検出できるようにしたり、外部から保護ICをコントロールできるように、リセット端子を追加したり、温度保護機能を搭載する製品も開発しました。
2019年には、スタンバイ端子を搭載し、この端子をLにすることで、消費電流をほぼゼロにして、電池パック製造後、エンドユーザーに行き渡るまでに保護ICの消費電流により電池が消耗するのを防ぐことができました。
日清紡マイクロデバイス(旧リコー電子デバイス)のリチウムイオン電池保護ICはこちら
このように、時代を重ねるにつれ、社会の要求に沿って、リチウムイオン電池も、電池の保護ICも進化してきました。
今回はそんな保護ICの歴史を学べる回となっていますのでぜひご覧頂けたらと思います。
第1回 リチウムイオン電池保護ICの歴史(前編)~初期の機能から最新の機能まで~
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