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ハッカソンで若手技術者が生み出したデモ機たち

hack2

前回の、ハッカソン紹介コラム前編では、日清紡マイクロデバイスのハッカソン(以降、NISDハッカソンと呼ぶ)というイベントについて、始めた経緯や活動内容について、ご紹介しましたが、後編の今回は、そのNISDハッカソンで、生み出されたアウトプット、プロトタイプのデモ機に焦点をあてて、ご紹介したいと思います。

★★★

 

 

NISDハッカソンの振り返り

話を進める前に、まず、簡単に、前回の振り返りをしたいと思います。
2017年に始めた、当社のハッカソンは、若手技術者に一箇所に集まってもらい、自分たちで選んだ自社製品の顧客価値を見極め、その製品を使ったデモ機とそのデモ機を紹介する動画を作り、顧客にアピールする(実際は報告会でのプレゼン)という、とんでもなく大変そうなことを短期間で体験してもらう、教育イベントです。

前回のハッカソンコラム前編でも紹介したように、NISDハッカソンは、大きく分けると4つのステージがあります。
①M5Stackハンズオン(マイコンの使い方習得)
②アイデア出し事前講習(グループワークでアイデア出しの基礎をレクチャー)
③アイデアソン(テーマ設定し、システムの構想から、部品レベルに落とし込み、電気街へ調達)
④実装/成果報告会(デモ機及びアピール動画の作成と成果報告の実施)

このステージを1週間(正確には5営業日)という短い時間で、デモ機や動画作成、そして報告会でのデモ機実演まで行う必要があります。

board3

①M5Stackハンズオンで使用するマイコンボードとプログラミングツール

aideason2

②アイデア出し、③アイデアソンの様子

 

 

①~③のステージを経て、④の実装ステージで作られた、デモ機は以下の4つでした。(リンクを押せば該当のデモ機に移動します)

・低オフセットオペアンプで、コントロールする”バギー”
低出力電圧のDC/DCモジュールを使った”省エネ換気扇”
タッチレスセンサを使って施錠状態をモニタリングする新しい”スマートロック”
タッチレスの新しい着眼点でアピールする”駐車券発券機”

次はこれらのデモ機をそれぞれ紹介していきます。
※今回は昨年(2022年)当社の川越事業所で行われたハッカソンを例にご紹介しています。

 

 

低オフセットオペアンプで、コントロールするバギー!

まず、最初は、当社の低オフセットのオペアンプ(NL6012)を使った提案です。
デモ機としては、地面の濃淡を判別して走るバギーです。地面が黒いと走りつづけ、黒より色が淡くなると止まる、という仕様です。

システムとしては、以下のとおりです。
①バギーの車体下部にある光センサで地面の色の濃淡を検出し、アナログ信号化。
②アナログ信号の変化は微小のため、オペアンプで10万倍に増幅する。
③10万倍されたアナログ信号をマイコン内蔵のA/Dコンバータでデジタル化し、その値を反射率として、あらかじめ設定したしきい値と比較。
④しきい値を超えた場合は、モーターを止め、バギーを停止させる。また、しきい値を超えた値はLCDに表示させる。

バギー2

デモ機のバギー

バギーシステム2-1

システム概要図

このデモ機では、オペアンプを載せ替えて実装できるようにして、それぞれの性能を比較できるような仕様になっています。いわゆる過去製品では反応しない濃淡が、開発製品では反応して、ストップできれば、低オフセット品のアピールになります。よって、できるだけ 反射率の微小な変化でバギーを反応させることに注力したそうですが、微小な変化に反応するということは、逆にノイズにも反応してしまうため、かなり試行錯誤を繰り返したそうです。
開発製品の特徴をアピールできるデモ機を作ることは、ハッカソンにとって重要なことです。

bagi2バギーを走らせて実演中

 

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低出力電圧のDC/DCモジュールを使った省エネ換気扇!

次は、当社の低出力電圧DC/DCモジュール、RM516をを使った提案です。
このICは、Min:0.3Vの電圧が出力可能なため、省エネのシステムを作るにはモッテコイです!

デモ機のシステムとしては、以下のとおりです。
①発生したガスをガスセンサーが感知して、マイコンに信号を送信。
②マイコンはあらかじめ決めたしきい値にしたがい、ガスの量が多いか、少ないかを判断し、動作モードをコントロール。
③ガスの量が多い場合は、SW2をあけて、昇圧回路を動作し、モーターをフル回転。(下図の左側)
④ガスの量が少なくなってきたら、SW2をしめて、新たにSW1をあけ、低消費のRM516でモーターを回す。(下図の右側)

kankisenシステム構成

多くの換気扇は、ガスの量と換気扇が回るスピードに、相関関係はありませんが(人が手でスピードを調整する)、このシステムでは、ガス量が少なくなると、低消費のモーターに自動的に切り替わるような、省エネに長けたデモ機を提案しました。
お客様の立場になってお客様が喜ぶ提案を考えることもハッカソンの重要な活動の一つです!

ちなみに、今回はガスの代わりに、ウイスキーの匂いを使って換気扇を回しました。会議室に、パソコンや測定機器などと一緒に、ウイスキーがずっと置いてあるのは、なかなか見慣れない風景でしたwww。

gas2
ウイスキーを使って換気扇の動きをデモしているところ

 

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タッチレスセンサを使って施錠状態をモニタリングする新しいスマートロック!

次は、当社の光学式タッチレスセンサ、NJL5830R(OpttonTMを、使った、鍵の掛け忘れ対策の提案です。
室内側の鍵がツマミ式のドアに取り付けるシステムで、鍵をかける時と閉める時で、ツマミの状態が90度変わることを利用しています。
タッチレスセンサをちょっと違った観点で考え、新しい活用法を提案しました。

システムとしては以下のとおりです。
①OpttonTMでドアの鍵のツマミの状態が縦か横かを感知。また別のセンサでドア自体の開閉状態を感知し、それぞれマイコンに常時取り込む。
②マイコンは取り込んだ情報(ツマミとドアの状態)をスマートフォンに定期的に通知。
③ドアが閉まっているのに、鍵が掛かっていない場合(下表のハッチ部分)、スマートフォンにアラームを出し、ユーザーはスマートフォンからマイコンに施錠命令を出す。
④マイコンはその信号を受け取って、サーボモーターを制御して、簡易鍵をかける。

内鍵の状態 ドアの状態 スマートフォンへの通知
Close Close 両方Close(施錠)
Open Open ドアオープン
Open Close 無施錠(アラーム)

 

rock4システム概要

ハッカソンは短期集中のため、スマートフォンからの簡易ロックする機能までは、時間が足りず実装できなかったそうですが、
それでも、後付電子ロックのシステムを、自社ICを使って、短期間で作り、動作させるというのは、ハッカソンの醍醐味であり、すごいことです。

door施錠検知システムのデモ機

 

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タッチレスセンサを新しい着眼点でアピールする駐車券発券機!

みなさんはタッチレス機器といえば、なんのために使いたいですか?コロナ禍もあり、ほとんどの方は、”触りたくないから” ですよね?
最後に紹介するのは、その常識的な考えを覆し、違った方向からタッチレス製品を使ったデモ機を検討したシステムの紹介です。
先程紹介した、DC/DCモジュールのRM516と、タッチレスセンサのOpttonTMの両方を使用して、街中の駐車場にある駐車券発券機のデモ機を作りました。

システムとしては、以下のとおり。
①発券機に指が近づいたことを光学式タッチレスセンサOpttonTMが検知
②ボタンに触れなくても、ある一定時間以上の接近が検知できれば、マイコン(M5 stack)が、それを認識。
③マイコンが降圧DC/DCモジュール RM516に、指定時間だけEnable信号を出力
④RM516がONすることで、2つのモーターが起動し、駐車券を発券。同時にマイコンがスピーカーから音声を流す。

hakkenkiデモ機とそのシステム

このシステムの特徴は、RM516を使うことで、省電力のシステムを検討しているだけでなく、【タッチレス=触りたくない】という既成概念をとっぱらったところです。前述したように、従来は衛生面のことを考え、タッチしたくないところに使われてきたセンサを、視点をかえて、日常でちょっとだけ手が届きにくいところに、使った点です。このように、新しい製品アピール方法を考えて生み出すこともハッカソンならでは!なのです。

tatchless2

発券機に、届かないとき~!!

tatchless3

新しい着眼点!

 

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以上が、川越でのNISDハッカソンで作成された4つのデモ機たちです。
若手技術者による短期集中プログラムなのに、デモ機の完成度、結構高いと思いませんか?

 

参加者の満足度が高い、NISDハッカソン!

2回のコラムを使って、NISDハッカソンをご紹介してきました。
今回、ページの都合で、もうひとつのアウトプットである”動画”をご紹介することはできませんでしたが、そちらも、かなり完成度の高いものもありました。

以下はハッカソンの参加者アンケートの、ごく一部です。
デモ機が思い通りに動いたときは嬉しかった。
・普段あまり関わることのない部署や事業所の方と一緒に行うので、自分ではなかなか感じない点での意見を聞け、成長につながった。
売りての気持ちになって考える体験をすることで製品の理解が深まった。
・短期間のプログラムであるがゆえ、逆にチームがまとまって、開発を進めることができた。
など、全員と言っていいほど満足度が高かったです。

手前味噌になりますが、とても素晴らしい若手育成のイベントだと思っています。
当社は今後もハッカソンを継続的に開催し、お客様の立場に立って、モノを考えられる技術者を育成していきたいと思っています。


zentai今回のハッカソン参加者たち

 

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