私たちの生活は多くの電子機器に囲まれ、互いに干渉し合い電波が飛び交う中、ノイズを受ける機会が増えています。今回は、そんな環境下での電子機器の誤動作を防ぐ「高いノイズ耐性LDO(Low Dropout Regulator)」についてのお話です。
ある日、新人B君とベテラン社員の先輩Aさんは商談を終え、社内でノイズ対策とLDOの関係について話し始めます……
2025年12月24日 公開
教えて先輩!シリーズ 第19回
高いノイズ耐性LDOとは?~電子機器を守るノイズ対策~
LDOでノイズ対策ってどういうこと?
新人B
先輩、さっきのお客様との商談で「ノイズが課題」と言われていましたよね。LDOでノイズ対策すると言っていましたが、具体的にどういう話だったんですか?
先輩A
お客様は周囲のノイズの影響を受けてセンサーが誤動作するって言っていたね。
通常、LDOは出力ノイズ自体は小さいけど、外からのノイズに弱いものもあるんだ。高いノイズ耐性があるLDOは、その名のとおり、「外部からのノイズに強い」という特徴があって、システムの安定性を向上する目的で使えるんだ。
新人B
なるほど、ただ出力ノイズが低いだけでは足りないんですね。
ところで、高いノイズ耐性があるLDOって、そこまで重要なんですか?
先輩A
うん、最近は特に重要視されているよ。私たちの周りにはたくさんの電波が飛び交っているんだよ。だから電子機器は、周囲の強い電波に影響されて誤動作しないように、ノイズ対策が必要なんだ。
ノイズの問題と対策について詳しく知りたい方はこちら
電子機器の発展とともに深刻になっていくノイズ問題。半導体に求められるノイズ対策とは
新人B
良く理解できました。
EMC・EMI・EMSって何?どう違うの?
新人B
ところで、商談中に先輩が「EMS」って言っていましたけど、高いノイズ耐性とかEMSとか意味が分からなかったです。他にも、EMC、EMI、イミュニティなど。
先輩A
じゃあ、まず言葉の定義を説明しよう。まず、EMCは ElectroMagnetic Compatibility、電磁両立性のことだよ。
EMCは大きく分けると、ノイズを発生させる側の考え方(EMI)とノイズを受ける側の考え方(EMS)、この2つによって構成されているんだ。
- EMI(ElectroMagnetic Interference/ノイズエミッション)
ノイズを発生させる側の考え方。他の機器に対する電磁妨害源にならない。 - EMS(ElectroMagnetic Susceptibility/ノイズイミュニティ)
ノイズを受ける側の考え方。他の機器から発生した電磁妨害を受けても正常に動作する。
あと、EMSは「高いノイズ耐性」、または、「ノイズイミュニティ」とも言ったりすることが多いんだよ。
図2 EMC / EMI / EMS規格
新人B
つまり、
- EMI:周りの回路に迷惑をかけない
- EMS:周りからノイズを受けても正常動作する
ということですね!
そして今回の商談のお客様は、ノイズの影響を受けてもセンサーが正常に動作するように、EMSの対策を課題とされている、という事ですね?
先輩A
その通り。
どうしてノイズ対策が必要なの?
新人B
でも、LDOってただ電圧を安定させるだけじゃないんですか?
先輩A
それが、最近はそうもいかない。例えば商談のお客様が言っていたように、
- スイッチング時に発生する高周波ノイズが乗る
- 電子制御・ソフトウエア制御する機能が年々増加しており、誤動作や通信障害を引き起こすリスクが高まってきている
こういうトラブルもあり、ノイズ対策が求められるんだよ。
新人B
なるほど…LDO自体のEMS性能が機器の安定性に直結するんですね。
ノイズに強くて低消費なLDO!R1525の魅力
新人B
こういう状況にぴったりなLDOが、さっき商談で先輩が出していた型番、R1525 でしたよね?
先輩A
そう、あれが今回の本命。R1525の強みは、“高いノイズ耐性”に加えて“低消費”なんだ。
図3 12V対応製品での同社製品(赤丸「R1525」「R1526」「R1540」)と他社製品(灰丸)の特性
新人B
先輩、この図3って何を表しているんですか?
先輩A
この図3はノイズイミュニティと消費電流の関係を表したグラフだよ。
・縦軸:ノイズイミュニティ[dBm]→高いほどノイズに強い
・横軸:消費電流[μA]→低いほど省電力
新人B
R1525の赤い点が左上の方にありますね。
先輩A
そうだね。R1525は33dBmくらいで一般的なLDOより10dB以上ノイズに強いんだ。しかも横軸を見ると、消費電流は2.2μAと超低消費!
つまりノイズに強いのに省電力を両立できるんだ。
新人B
なるほど。R1525は、ノイズに強くて無駄に電流を消費しないってことですね?
先輩A
その通り。
だから、“高いノイズ耐性”に加えて“低消費”にしたいってお客様に刺さるんだ。
新人B
先輩、この図4って何を表しているんですか?
図4 ノイズイミュニティ特性
先輩A
この図4はね、外部ノイズが入力されたときに出力電圧がどれだけ安定しているかを、比較したグラフなんだ。横軸がノイズの周波数で縦軸がLDOの出力電圧だよ。
新人B
なるほど...ノイズの周波数を変えながらLDOの出力電圧を測定しているんですね。他社製のLDOは、結構出力電圧が落ちてますね。
先輩A
そうそう。300~400MHzあたりは時にひどくて、4.4V位まで出力電圧が下がっちゃってるね。これは外部からのノイズに大きく影響して、出力が安定して保てないってこと。
新人B
つまりノイズイミュニティが弱い状態ってことですね?
先輩A
その通り。一方で赤い線R1525を見てみると、全周波数帯でほぼ一直線。ほぼ5Vをキープしてるよね?
新人B
ほんとですね!ノイズを入れても電圧がほとんど動いていない!
先輩A
これがR1525の強み。外からノイズが来ても出力電圧が変わらない。つまり、ノイズイミュニティが非常に高いってこと。
実際、今日のお客様の課題「周囲のノイズの影響を受けてセンサーが誤動作する」には、まさにピッタリ。
新人B
なるほど…「ノイズに強くて、低消費なLDO」ってことですね?
先輩A
その通り。だから商談では R1525 を推したんだよ。
新人B
内容がつながりました!次の商談でも、R1525を“高いノイズ耐性”に加えて“低消費”として説明できそうです。
先輩A
うん、自信持って提案していいよ。
新人B
はい、ありがとうございました!
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