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AC(交流)とDC(直流)ってどう違うんですか? ~電源設計で押さえる待機電力とEMIの基本~

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AC/DC電源の設計を任された新人B君。しかし「ACとDCの違いって何だっけ…?」と手が止まってしまいます…
なぜ変換が必要なのか、そして設計で重要なポイントとは何か。
その疑問を、先輩Aさんとの会話でひとつずつ解消していきます。

 

2026年06月30日 公開

教えて先輩!シリーズ 第21回

AC(交流)とDC(直流)ってどう違うんですか?
~電源設計で押さえる待機電力とEMIの基本~

 

 

 

AC/DC電源とは?交流と直流の違い

kouhai_man_ase新人B
先輩、AC/DC電源の設計を任されるようになったんですが、正直、ACとかDCとか、ちゃんと理解していなくて…
ACは交流、DCは直流ということはわかっているのですが、どう違うのですか?

senpai_man_egao先輩A
確かに、直流はイメージつきやすいけど、交流ってどんなの?って思うよね。要は電気の流れ方の違いだよ。
交流は、電流の向きと大きさが周期的に変わる。一方で直流は、一定方向に安定して流れ続ける。

kouhai_man_gimon新人B
え?電流の向きと大きさが変わるって、どういう意味ですか?電流ってずっと同じ方向に流れるものじゃないんですか?
それに、どこからどこに向きが変わるんですか?もしかして、機器の方からも電気が流れるんですか?

senpai_man_egao先輩A
いい質問だね。交流はプラスとマイナスが周期的に入れ替わっているんだ。
だから、ある瞬間は「電源 → 機器」に流れていても、次の瞬間には逆向きに流れるように見える。

kouhai_man_gimon新人B
えっ、機器から電気が戻るんですか?逆流するってこと?

 senpai_man_egao.png先輩A
厳密には「戻る」というより、極性が入れ替わる結果として電流の向きが反転する、と捉えると誤解が少ない。
コンセントの電気は、行ったり来たりしているイメージだね。

kouhai_man_gimon新人B
じゃあ「大きさ」も変わるのはなぜですか?

  senpai_man_egao.png先輩A
理由は電気の作られ方にある。
交流は、発電所でコイルと磁石を動かして作る。
その仕組み上、電圧が時間とともに自然に変化する。電圧が変われば電流の大きさも変わる。
だから電流は一定ではなく、波の山と谷のように強くなったり弱くなったりするんだ。
一方、直流は「ずっと同じ向きに流れ続ける電気」だ。向きも変わらないし、大きさも基本は一定。
例えば電池なら、プラスからマイナスに向かって流れ続ける。途中で向きが変わったり行き来したりはしない。それが直流だよ。

dc_image図1:発電の仕組みと交流の電圧

 New_employee_B_smile新人B
交流は行ったり来たりして、直流はずっと一方向に流れるんですね。

 senpai_man_egao.png先輩A
そう。そしてこの違いがそのまま「得意なことの違い」になる。
直流は電圧・電流が安定しているので、ICや電子回路のように安定動作が必要な場面に向いている。
一方、交流はトランスで変圧しやすいから、送電で高電圧にして損失を抑えられるんだ。

kouhai_man_gimon新人B
なぜ高電圧なら損失を抑えられるんですか?

senpai_man_egao.png先輩A
電気を遠くに送るとき、電線では一部のエネルギーが熱として失われるんだ。
この損失は、ざっくり言うと電流が大きいほど増えるんだ。電力って以下の式なのは知っているよね?
【電力 = 電圧 × 電流】
だから、同じ電力を送る場合、電圧を高くすると、必要な電流を小さくできるだろ。
電流が小さい方が、電線で失われるエネルギーが少なくなるんだ。
つまり交流は、高い電圧にして遠くまで効率よく送り、使う場所で安全な電圧に下げることができるのがメリットなんだ。

kouhai_man_gimon新人B
なるほど!じゃあ、実際にはどっちが使われているんですか?

senpai_man_egao.png先輩A
両方だよ。発電所からコンセントまでは交流で送られている。でも、ICや電子機器の内部では直流で動作している。
だから、そのままコンセントに繋いでも使えない。そこで必要になるのが「変換」だ。
コンセントの交流を、機器で使える直流に変える。この役割を持っているのがAC/DC電源だよ。

ACDC_image_20260602
図2:発電から機器までの電気の流れ

New_employee_B_smile新人B
なるほど、電気を使える形に整える装置という感じですね。

senpai_man_egao.png先輩A
まさにそうだね。
ただし電源はそれで終わりじゃない。ここでDC/DC電源も関係してくるんだ。

 

 

 

DC/DC電源とは?AC/DC電源との役割の違い

kouhai_man_gimon新人B
DC/DCって、AC/DCとは何が違うんですか?同じ直流なのに、なんでわざわざ変換する必要があるんでしょう。

senpai_man_egao先輩A
違いは「入力」だ。「同じ直流」でも、機器の中では回路ごとに必要な電圧が違う。
例えば5Vで動く回路もあれば、3.3Vや1.2Vじゃないと動かない回路もある。
だからAC/DCで作った直流を、それぞれの回路に合わせた“ちょうどいい電圧”に変える必要がある。
整理すると、AC/DCは交流を直流に変える。一方でDC/DCは、すでにある直流を別の電圧の直流に変える。
AC/DCが「外部電源の入口」。DC/DCが「内部の電圧調整役」だ。

business_man1_1_smile11-1新人B
つまり、コンセントのACをまずAC/DCで直流にして、そのあとDC/DCで5Vや3.3Vみたいに必要な電圧に段階的に変換して各回路に届けているのですね。

senpai_man_egao先輩A
その通り。
そして、ここが重要なポイントなんだけど、AC/DCは電力を最初に大きく変換する部分だ。だから「待機電力」や「EMI」といった問題が特に厳しく見られる。設計するときは、そこを意識していこう。

 

 

電源設計で重要な待機電力とノイズ(EMI)

kouhai_man_gimon新人B
AC/DC電源の設計を任されるようになってから「待機電力」と「EMI」って言葉を毎日のように聞くんですが……
なぜここまで重要視されているんでしょうか? 

senpai_man_egao先輩A
いい質問だね。新人のうちにそこを理解しておくと、設計の考え方がブレなくなるよ。

まず、待機電力からいこう。
待機電力が重要とされている理由は一言で言うと、「数が圧倒的に多いから」なんだ。スマートメータや通信機器、住宅設備は、1台あたりの電力は小さくても、世界中に何億台とある。しかも、多くの時間は待機状態でずっと動いているんだ。仮に1台あたり数十mW違うだけでも、社会全体で見ると発電所1基分、なんて話になる。だから各国で待機電力規制が強化されているんだ。
そして、待機中は出力性能より省電力が大事なんだ。待機時に求められるのは、高速応答や低リップルじゃなくて、ICがどれだけ無駄に動いていないかだ。そこで効いてくるのが、COT(Constant On time:コンスタントオンタイム)制御だ。

 

待機電力を下げる仕組み(COT制御)

kouhai_man_gimon新人B
COT(コンスタントオンタイム)制御って何ですか?オンにする時間を一定にしているってことですか?

senpai_man_egao先輩A

そう。スイッチのオン時間を一定にして、必要なときだけ最小限スイッチを入れる制御だ。
常に動き続けるのではなく、「短く動く」を繰り返す。
これによって、

  • 不要なスイッチングを減らせる

  • IC内部回路の不要な部分をとめてさらに動作回数が減る

結果として、IC自身の動作消費電流が下がるんだ。 

 business_man1_1_smile11-1新人B
待機電力対策って部品を減らす話だと思っていました。

 senpai_man_egao先輩A
それもあるけど、一番効くのは「どう動かさないか」を決める制御なんだ。

次に、EMIはどうしてそんなに厳しいのか?理由は2つあるよ。
1つ目は、電子機器が増えすぎたてノイズ源が増えたこと。1台あたりの許容値はどんどん厳しくなっている。
2つ目は、誤動作や通信障害を防ぐためだ。電源が出したノイズが近くの通信機器やセンサーに影響すると、通信が乱れたり誤動作につながる。
だから「自分の機器が動けばいい」ではなく、周りの機器に影響を与えない設計が求められる。

business_man1_1_smile11-1新人B
ノイズって、出している機器だけの問題じゃないんですね。 

 senpai_man_egao先輩A
そう。だからEMI規格は年々厳しくなるんだ。 

≫ 関連リンク:ノイズの問題に関する基礎解説

img_design-support_08 技術の進展により日常生活は便利になっていく一方で、それらが発する「ノイズ」の問題とは。本ページでは、ノイズの基礎からEMC/EMI/EMS規格まで分かりやすく解説しています。
詳しくはこちら

 

EMIを抑える仕組み(疑似共振スイッチング)

senpai_man_egao先輩A
EMIが問題になるのは、多くの場合、しっかり電力を出している通常負荷時だ。
スイッチングエネルギーって大きいんだ。そこで有効なのが、疑似共振スイッチング。

kouhai_man_ase新人B
疑似共振って…名前からして難しそうですね。

 senpai_man_egao先輩A
簡単に言うと、スイッチを入れるタイミングを工夫してスイッチング損失とノイズを減らす技術だ。
完全な共振ではないけれど、それに近い状態を利用するので「疑似共振」と呼ばれている。具体的には、電圧や電流が自然に変化するタイミングをうまく利用する。

 3のように、 共振によってできるドレイン電圧が低いタイミング、つまり“谷”でスイッチをオンする。 
すると、 

  •  スイッチング損失が減る

  • 電圧変化が緩やかになり、EMIが低減する  

通常負荷時に大きな効果が出るんだ。電圧の立ち下り(dv/dt)が穏やかになる分、高周波成分やリンギングも抑えやすく、結果的にEMI対策として効きやすい。

Quasi-Resonant Switching Operation Waveforms
図3:疑似共振スイッチングの動作波形(谷間でのスイッチング)

 

 

負荷で変わる電源設計の考え方  

 business_man1_1_smile11-1新人B
なるほど、オンする瞬間を選ぶだけでノイズが減るんですね。
話をまとめると……待機時と通常負荷時では、重視するポイントが違うんですね。

senpai_man_egao先輩A
その通り。だから設計では、

  •  待機時はCOT(Constant On time)制御で動作消費電流を低減

  • 通常負荷時は疑似共振スイッチングでEMIを低減

 負荷状態ごとに主役の制御を変えるのが自然なだ。

 

 

その考え方を形にしたIC

kouhai_man_gimon新人B
先輩、その考え方が最初から組み込まれているICって……?

senpai_man_egao先輩A
あるよ。擬似共振型フライバックAC/DC電源制御IC、NJW4790Aだ。
擬似共振スイッチングと軽負荷モードを備え、負荷に応じて効率よく動作するように設計されている。
通常動作時の効率を確保しつつ、待機時には無駄な電力消費を抑え、無負荷時でも75mW以下という低消費電力を実現している。
さらに自励発振スイッチングでON/OFF時間が最適化され、リップルの少ない安定出力が得られる。
加えてEMI特性にも優れ、ノイズ規格CISPR32*をクリアする低エミッションを実現している。

*CISPR32:パソコンやテレビなどの電子機器が周囲に出してよいノイズの量を定めた国際規格

NJW4790A_CISPR32

図4:NJW4790Aを使用した50Wデモボードの雑音端子電圧特性(CISPR32適合)

business_man1_1_smile11-1新人B
背景が分かると、どうしてこの機能構成なのか、納得できますね。

senpai_man_egao先輩A
そう。「なぜ必要か」を理解して選ぶと、電源設計はずっと楽になるよ。 

 business_man1_1_smile11-1新人B
ありがとうございます、先輩! まずは評価から始めてみます。

 

njw4970a10 NJW4790A シリーズ
擬似共振型フライバック AC/DC コンバータ スイッチング電源制御IC
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第1回:太陽電池だけでは朝まで動き続けないんです・・
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日清紡マイクロデバイスのマーケティング担当者がFAE(Field Application Engineer)や企画担当者、品質保証担当者のダメ出しを受けながら書いています。 エンジニアの皆さんには当たり前の内容だとは思いますが、初心者の皆さんに少しでもエレクトロニクス分野に興味を持っていただければ幸いです。

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